日本頭頸部外科学会

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下咽頭がん

下咽頭がんとは

下咽頭がんはのどにできるがんですが、食道の手前ですぐ前に喉頭があるため進行すればそれまでの声を犠牲にせざるを得なくなるがんです。日本では1年間に約4200人が新たに診断されます。たばこや飲酒と関係が深く、男女比は約10:1です。初期には特有の症状がないことが多く、進行すると、のどの痛みや嚥下障害が出現したり、首にしこりを触れるようになったりします。転移しやすいため早期がんで発見されることは多くはありませんが、2週間以上のどに小骨が刺さっているような違和感や固形物が通りにくい感じが続く場合には、耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診することをお勧めします。

検査

下咽頭がんが疑われた場合、ファイバースコープや上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を用いて精密検査を行い、生検といって腫瘍の一部を米粒程度採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認する検査が行われます。結果が出るのに通常1週間~2週間かかります。がんの深さを診断するためや頸部リンパ節転移の有無を診断するために造影CTが行われます。これらの検査の結果次第では、他の部位への遠隔転移を有無の診断のためにPET検査が追加される場合もあります。

治療

ステージⅠでは放射線治療が一般的ですが、非常に小さな病変に対しては全身麻酔下に内視鏡切除も行われます。ステージⅡ・Ⅲの多くは、放射線治療を主体に抗癌剤を加えた化学放射線療法や喉頭温存手術で声を温存しながら根治を目指すことができますが、喉頭側に広がった進行がんに対しては下咽頭喉頭全摘出術を行わざるを得ない場合が多くなります。その際には、小腸の一部である空腸などを用いて、のどの食事の通り道を同時に再建する必要があるため長時間の手術となります。

治療後

放射線を主体とした治療は約7週間の治療期間で、のどの乾燥に伴う違和感が後遺症として残ります。また、嚥下障害が生じた場合には誤嚥性肺炎に注意が必要となります。下咽頭喉頭全摘出術後は首の穴(気管孔)からの呼吸となり、約10日後から経口摂取が開始になります。術直後は筆談ですが、代用音声(食道発声や人工喉頭、シャント発声など)の習得により新たな声での生活となります。退院後は定期的な通院による経過観察とCTや上部消化管内視鏡検査などの検査を行う必要があります。国立がん研究センターがん情報サービスによると、ステージ別の5年相対生存率はステージI/ II/ III/ IVがそれぞれ70%/62%/60%/35%と報告されています。

更新日時:2020年11月5日
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