日本頭頸部外科学会

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唾液腺がん

唾液腺がんとは

唾液腺がんは唾液腺(唾液をつくる臓器)にできる悪性腫瘍(がん)で、頭頸部がん全体の5%程度を占めます。唾液腺は大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と小唾液腺に分かれますが、耳下腺がん顎下腺がんで9割程度を占め、舌下腺がんや小唾液腺がんは非常に稀です。病理組織型(がん細胞の種類)は最新のWHO分類で23種類と非常に多彩であることが特徴で、それらはさらに高悪性、中等度悪性、低悪性に分類されます。また、後述するように組織診(生検)が困難であることと相まって、病理組織型の診断はおろか良悪性の鑑別すら困難となることがあります。そのため手術での切除範囲に苦慮する事も少なくありません。症状としては当初無痛性の腫瘤として自覚することが多いですが、増大・進行するに伴い痛み、しびれ、運動麻痺などが出現することもあり、悪性腫瘍を強く疑う徴候となります。それらの自覚症状が出現した場合は近くの耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診するようにしてください。

検査

多くの腫瘍では病変の一部を塊として採取する組織診で良性と悪性の鑑別や、病理組織型を診断します。しかし、唾液腺では口腔や咽頭などのように病変に直接到達できず、容易に生検を行えません。そのため、多くの場合は病変に注射針を穿刺し、内部の細胞を吸引する穿刺吸引細胞診を行います。手技としては簡便ですが、診断精度は生検に劣ります。その他に超音波、CT、MRIで腫瘍の性状、進展範囲、転移の有無を評価し、必要に応じてPET検査で遠隔転移の全身検索を行います。

治療

唾液腺がんは基本的に化学療法(抗がん剤)や放射線療法の感受性(治療への反応)が悪く、手術が第一選択となります。神経、筋肉、骨、皮膚など周囲の組織への浸潤がある場合はそれらの組織も合併切除されます。切除による欠損が大きい場合、そこを充填するために自分の他の部位(大腿や腹部など)から皮膚や皮下脂肪を栄養血管とともに移植する遊離組織移植が行われる場合があります。頸部リンパ節に転移がある場合、または潜在的な転移の可能性が考えられる場合はリンパ節の切除(頸部郭清術)も行います。切除した検体の病理結果に応じて補助治療を目的とした術後放射線療法を追加することがあります。近年では特定のタンパクが発現している腫瘍に対して、分子標的薬の有効性が複数報告されるようになり、今後の新たな治療選択肢として期待が寄せられています。

治療後

治療終了後は定期的な外来通院と画像検査が必要となりますが、唾液腺がんは組織型や悪性度によって局所再発(同部位の再発)や遠隔転移のしやすさ、増大速度なども様々で、治療成績も大きく異なるため、それぞれに合わせた検査の種類や間隔を検討する必要があります。

更新日時:2020年11月5日
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