日本頭頸部外科学会

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耳下腺がん

耳下腺がんとは

耳下腺がんとは大唾液腺の一つである耳下腺に発生する悪性腫瘍(がん)で、唾液腺がん全体の5~6割を占める最も頻度の高いものです。耳下腺は耳の前方から下方にかけて左右一対存在し、その中心を顔面神経(顔面を動かす神経)が貫いています。症状は他の唾液腺がんと同様に当初無痛性の腫瘤として自覚することが多いですが、増大・進行とともに痛みやしびれに加え顔面神経麻痺が出現することが特徴です。顔面神経麻痺はがんを強く疑う徴候となります。たとえ腫瘍が小さく、触知しない場合でも麻痺が出現することはあるので、改善傾向の見られない顔面神経麻痺では必ず耳下腺がんの可能性を除外する必要があります。

検査

病変に直接到達することはできないため組織診(生検)は通常行われず、穿刺吸引細胞診で良悪性の鑑別と可能ならば病理組織型の診断を行います。超音波、CT、MRIで腫瘍の性状、進展範囲、転移の有無を評価し、必要に応じてPET検査で遠隔転移の全身検索を行います。

治療

手術による完全切除が治療の第一選択となります。切除範囲としては、顔面神経より表層(浅葉)のみ切除する耳下腺浅葉切除術、全て切除する耳下腺全摘術、耳下腺のみならず下顎骨、側頭骨(耳の骨)、顔面皮膚など周囲の組織も併せて切除する耳下腺拡大全摘術があります。どの術式を選択するかは腫瘍の進展範囲や悪性度に応じて決定されます。顔面神経については麻痺がなければなるべく温存が試みられますが、悪性度や進展範囲によっては合併切除が必要な場合もあります。切除による欠損が大きい場合、そこを充填するために自分の他の部位(大腿や腹部など)から皮膚や皮下脂肪などを栄養血管とともに移植する遊離組織移植が行われます。切除した顔面神経を他の神経にて再建する場合もあります。頸部リンパ節転移がある場合や潜在的転移の可能性が考えられる場合は、頸部郭清術も同時に行われます。切除検体の病理結果によっては術後に放射線治療が追加される場合もあります。

治療後

退院後は定期的な触診や画像検査などによる経過観察を行っていく事になります。再発や転移が出現した場合、切除可能であれば手術となりますが、切除不能であれば放射線療法や薬物療法を検討することになります。ただし、その際の予後は厳しくなります。

更新日時:2020年11月5日
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