日本頭頸部外科学会

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上顎洞がん

上顎洞がんとは

上顎がんは頬骨の裏側にある上顎洞と呼ばれる空洞の粘膜上皮から発生したがんを指します。鼻腔・副鼻腔のがんのなかでは最も多くみられるがんで、日本では1年間に700~800人が新たに上顎がんと診断されます。上顎がんの病理組織診断のほとんどは扁平上皮がんと呼ばれるものです。初期では症状が出づらく、多くは進行がんとして見つかります。症状としては頬部の痛み、腫脹、鼻出血、口内出血、開口障害などがみられます。このような症状を自覚した場合は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診してください。

検査

上顎がんは進行すると内側にある鼻腔に進展します。そこで、外来では鼻咽腔ファイバースコープにて鼻内の観察をします。また、下方に進展すると口腔の上面にあたる硬口蓋と呼ばれる部位に浸潤します。よって口内も診察をします。その際に開口障害の有無を確認します。腫瘍の露出が見られた場合、生検といって腫瘍の一部を米粒程度採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認する検査が行われます。結果が出るのに通常1週間~2週間かかります。特に鼻内から生検した際には出血する場合もあり、生検後は鼻腔内に止血剤や止血用のガーゼ類を詰める必要が生じる場合もあります。また、腫瘍の進展範囲を把握するために、造影CTおよび造影MRIを施行します。

治療

上顎がんの治療の基本は進展範囲に合わせた切除±術後化学放射線治療です。切除の仕方には上顎部分切除、上顎全摘、上顎拡大全摘などがあります。上顎部分切除後はプロテーゼと呼ばれる特殊な義歯の装用が必要になる場合があります。切除範囲の大きい後者二つでは、上顎の欠損部に対して、ご自身のお腹もしくは太ももの皮膚および筋肉などを移植する遊離皮弁移植術が行われます。病理組織検査の結果次第で術後化学放射線治療が追加される場合もあります。また、手術治療を行わずに化学放射線治療のみで治療を行う場合もあります。さらに化学療法の効果を最大限にするために、足の付け根からカテーテルと呼ばれる細い管を、上顎への栄養動脈である顎動脈まで進めて抗がん剤を注入する超選択的動中化学療法併用放射線治療が行われる場合もあります。

治療後

上顎部分切除後は早ければ翌日から食事が開始になります。遊離皮弁移植術を行った場合は1~2週間後から経口摂取が開始となります。退院後は定期的な通院が必要となります。時々CTなどの検査も行う必要があります。

更新日時:2020年10月20日
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