日本頭頸部外科学会

一般のみなさん

乳頭がん

乳頭がんとは

甲状腺がんの約90%を占めるおとなしいタイプのがんで、最も代表的な組織型です。

検査

まず外来で触診と喉頭内視鏡検査を行います。甲状腺にコブがあれば甲状腺超音波検査(エコー)を行います。超音波検査でがんの可能性があれば穿刺吸引細胞診検査を行い、がんかどうか確認します。がんの可能性が高い場合は頸部リンパ節や肺などへの転移を確認するためにCTを行います。

治療

手術

手術が最も有効な治療(標準治療)です。各種検査結果に応じて適切な範囲の切除を行います。頸部リンパ節転移を伴っている場合やその可能性が高い場合には、同時に頸部のリンパ節を切除する手術(頸部郭清術)を行います。甲状腺は全摘出(全部)か葉切除(半分)が必要になります。全摘出の場合は甲状腺ホルモンが無くなりますので、甲状腺ホルモン剤の内服を続ける必要があります。また術後副甲状腺機能低下症による血液中のカルシウム低下を補うため補正薬剤の内服が必要になる場合もあります。葉切除の場合、甲状腺機能低下症や副甲状腺機能低下症は稀です。手術が葉切除で済めば良いのですが再発の可能性が高い場合や術後放射性ヨウ素治療が必要な場合は全摘出が必要です。一般的には手術の翌日から食事を開始し、数日後に創が落ち着いたら退院です。
なお他の頭頸部がんと異なり甲状腺がんでは稀ではありますが、非常に進行している場合などでは術後喉頭浮腫による窒息を避けるために気管切開を行うことがあります。また一時的に開けた気管切開を閉鎖するために、後日追加手術が必要になることもあります。
手術後は定期的に血液検査、超音波検査、CTなどで再発有無をチェックしていきます。

放射線治療(放射性ヨウ素内用療法)

甲状腺を全摘出した乳頭がんや濾胞がんの方で、特に肺や骨に転移がある場合や転移の危険性が高い場合に行われる治療法です。通常の放射線治療は外から放射線を照射する外照射という方法で行われますが、本治療は放射線を発する飲み薬を内服することで行う内照射という治療法の一つです。甲状腺は元々食物に含まれるヨウ素を取り込む性質がありますが、肺や骨に転移した甲状腺がん細胞もヨウ素を取り込む性質を有していることがあります。本治療はこの性質を利用します。甲状腺全摘出後に放射性ヨウ素を内服すると放射性ヨウ素が転移部の甲状腺がん細胞に取り込まれ、放射性ヨウ素が転移部で放射線を出すことにより転移部のがん細胞が破壊されます。甲状腺は必ず全摘出しないといけないこと、乳頭がんや濾胞がんの全てがヨウ素を取り込む訳ではないとうことに注意が必要です。また、数日間外部との接触を避ける隔離入院が必要になりますので実施可能な病院は限られており、手術を受ける病院で放射性ヨウ素内服療法が出来ないことも多いです。手術をした病院と連携している病院の紹介を受けて下さい。

がん薬物治療

甲状腺がんの基本的な治療は手術や放射性ヨウ素治療ですが、その後に残念ながら再発して治療出来ない場合は2014年からがんに対する新しい薬剤である分子標的治療薬という薬剤を用いることが出来るようになりました。分子標的治療薬はいわゆる抗がん剤(化学療法)とは全く異なる副作用を有しているため注意が必要です。また確かに一定の方には効果が認めれらるものの、どのような状況で使用開始すべきかについては様々な議論があります。本治療を開始するかどうかは担当の先生やご家族と良く相談して決めて下さい。

更新日時:2020年11月5日
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