日本頭頸部外科学会

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上歯肉がん

上歯肉がんとは

歯肉とはいわゆる“歯ぐき”の事で、歯の根っこを支える骨に付着する組織です。上あごの歯肉を上歯肉と言い、そこにできるがんが上歯肉がんとなります。上歯肉がんは稀な口腔がんの中でも更に稀とされており、初期の段階では歯肉炎(歯周病)との鑑別が困難な場合も多く、治りにくい歯肉炎ではがんの可能性についても注意が必要です。また、進行すると骨を破壊しながら鼻腔や副鼻腔(鼻副鼻腔)に達することもあり、鼻副鼻腔がんとの鑑別が困難な場合もあります。鼻副鼻腔がんと口腔がんでは治療戦略が異なるため、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門医による正確な診断および治療方針の決定が必要です。

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検査

上歯肉がんが疑われた場合、組織診(生検,病変の一部を小さく塊として切り取る検査)で診断を確定します。画像検査としては、病気の広がりを評価するためのMRI、頸部リンパ節転移や肺などへの遠隔転移の有無について評価するためのCTを行います。必要に応じて、PET/CTによる全身検索も行います。口腔がんは重複がん(同時に複数のがんできる事)が比較的多い事が知られており、上部内視鏡検査(胃カメラ)による食道がんや胃がんのスクリーニングを行う場合もあります。

治療

上歯肉がんの治療は、手術による切除が標準治療となります。がんが歯肉に限局しているような初期の病変でも、安全域の確保のために歯槽骨を含めた切除が必要となる場合がほとんどです。病変が鼻副鼻腔に広がっている場合もそれに応じた切除が必要となるため、進行がんでは切除後に大きな欠損を生じ、口腔内と鼻副鼻腔が交通する事も少なくありません。交通したままでは嚥下や構音が非常に困難となるため、義歯などによる鼻副鼻腔閉鎖が必要となります。欠損が大きい場合は、大腿などから皮膚および皮下組織を採取し、欠損部を充填する遊離組織移植を行う事もあります。頸部リンパ節転移がある場合、転移の危険性が高いと判断される場合は同時に頸部郭清術(決められた領域のリンパ節を周囲の脂肪ごと切除する手術)を行います。病理組織検査の結果次第で術後化学放射線治療が追加される場合もあります。

治療後

手術により鼻副鼻腔と口腔が大きく交通し、義歯などで十分に閉鎖できない場合は嚥下・構音障害を生じ、根気強くリハビリを続ける必要があります。再発・転移のリスクもあるため、定期的な外来診察および画像検査を最低5年間は継続する必要があります。

更新日時:2020年11月5日
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